第21話 大金
駆けつけたのは鈴音さん達だった。
「で?五美君がこれを?」
ヒビ割れた地面を指差して鈴音さんが聞く。
「まぁ、はい」
「はぁ、流石にあの時は本気じゃなかったみたいだね。止められて本当よかったよ」
「あはは、初めて会った時ですか?」
あの時はムカッときただけだからな。
「そうだね。って、それよりも
「わぉ!やったね!安全なとこにしてね?」
とサンちゃんさんは言うが、狙われていたのだから当然だけど、
「あいつらは一体?」
「それは極秘情報だから言えないんだよ」
鈴音さんはそう言うとサンちゃんさんを連れて車に歩いて行く。
気付くと地面の割れなんかは綺麗に直っていた。
「あ!スズ君!売れたお金は全額カードに入ってるからさ!『また俺の取り分を貰いに行ってもいいかな?』」
と後ろを向いて笑う。
「いつでも大丈夫です!あ、冬休みは会えないと思いますけど」
「分かった!じゃあ行ってくるね!」
「はい!いってらっしゃい!」
「…やっぱりいいね!」
サンちゃんさんは車に乗り込むと窓から手を振る。
「なんだったんだろうな?」
「あはは、君は知らなくていいんですよ」
「ッッ!?」
「宇田先生!?ビックリさせないでくださいよ!」
背後にいたのは宇田先生だった。気配すら感じさせなかったな。
「うん、まぁ、君たちが無事で良かったです。でも、もうこんな危ないことに首を突っ込んだらいけませんよ?」
とその細い目をさらに細くして言う。
「…分かりました」
「五美君や北王子君達はまだ私の生徒ですからね?」
いつもの笑顔になる。
「「「「「はい」」」」」
「よろしい!では一つだけ、今回はこれでお終いですので忘れて下さい。帰りは大丈夫ですね?」
「「「「「はい」」」」」
「はい、ではさようなら!」
「はい、失礼します」
と俺らは寮に帰って行く。
「で、なんで俺の部屋?」
ヒカル達が来ている。
「だって一番危ないだろ?」
「それにご飯も食べなくちゃね!」
とみんなが集まると宅配を頼み、各々座っている。
「あれなんだと思う?」
「敵?」
「そう!その敵よ!SWSに乗り込んで来るくらいの暗殺者ってなに?!」
アカネが拳を握りながら言うが、
「そう言われても」
分かるわけがないだろ。
「暗殺者って?流石に組織だろ?」
「だろうね」
アキとヤスがそう言うが、俺たちに出来ることはないだろ?
「あっ!来た来た!取ってくるね!」
勇者のヒカルは何も考えてないようだし。
「ふー、ほんと危なかったサンちゃんさんは誰に追われてたんだろ?」
ダンジョンコア絡みだよな?
「まぁ、飯を食って忘れようよ」
と俺が言うと、
「無理でしょ?」
と返され頑なにあのことを知りたがるが、今の俺たちでは何も分からないからな。
「だね!でもスズが言うことに一理あるでしょ?だってわからないんだもん」
ヒカルがそう言ってピザをテーブルに置いてタバスコをかけ始める。
「ま、待て待て!お前はかけすぎるから!」
「きゃー!私のプルコギが!!馬鹿じゃないの!?」
「はぁ、一枚は死守したけどさ」
上手いことみんなを誘導してくれたヒカルに感謝してピザを食べる。
「あー、辛い!でも美味いかも?」
「「「えー?」」」
「でしょ?これくらいかけたほうが美味いんだよ」
「アンタだけよ!」
とタバスコのかかっていないピザを食べる3人。
まぁ、これはこれで食えなくないからな。
休みまで後数日、
学校では休みに何するかとみんな浮かれている。
「でさ、クリスマスに大晦日もあるでしょ?」
「だよね!やっぱり何かしたいよね!」
と喋っていると、
「私らも入れてよ!せっかく帰って来たんだからイベントしたいしさ!」
「矢萩さん?まぁ良いけど?」
「よし!北原と羽田も一緒にね!」
「よろしくね!」
「よ、よろしくお願いします」
矢萩、北原、羽田の3人の女の子が入ってくると、
「じゃーさ!俺らもいいかな?」
と小日向が橋本を連れてやってくる。
「おう!多い方がいいからな!」
「やりぃ!これで寝正月にならなくて済むな!」
と言って笑っている。
クラスメイトってこんな感じだったっけ?
「じゃあ、色々決めないとね!」
「予約取んなきゃ無理っしょ!」
と早乙女がやってくると、
「カラオケ行こう」
と愛内が言う。
「あ!授業始まるよ!」
「次、英語じゃんか!やべぇ」
とヒカル達が戻っていく。
俺も教科書を出して準備をしてると、
スマホが鳴る。
『今日ファミレスね!』
愛内からのグループメールだ。
まぁ、皆んなようやく帰って来て遊びたくなって来たんだろうな。
学校が終わり、1人でショッピングモールに残高を確認しに行く。
「?!!!」
一・十・百・千・万…
「…は?」
あり得ない額のお金が入っている。
サンちゃんさんの言ってた額を予想以上に超えている。
一体どこにいくらで売ったんだ?
「遅ーい!」
「あはは、ごめんごめん!」
さすがにあれだけの額を見て血の気が引いた俺は少し風に当たっていたのだ。
「さぁ!入ろうよ!寒いしね!」
「だね!」
とファミレスに入ってまたみんなでイベントの案を出し合うが、俺は上の空で聞いてるだけだった。
「スズ?大丈夫か?」
「ん?おお!大丈夫だ」
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