第80話

「………で、なんの話してた?」



リョウはざっくりとした薄手のカーディガンを脱ぎ、ソファーの背に掛けると直ぐにあたしを問い詰める。


「…別に」


だけどそれは、何となく本人には言いたくない内容なので、視線を逸らして立てた膝のあいだに顔を乗せた。



「………レオ」


「恋バナだよーん」



矛先を変えた獲物はいとも簡単に答えをバラしてしまう。



「ちょっと、レオ!」


「ホントの事じゃん」



ケラケラ笑うレオに向かって、とうとう腰に引いていたクッションを思い切りに投げ付ける。



「レオ」



そのクッションを投げ返そうとしていたレオは、動きをピタリと止めた。


あたしも、少し低くなった声に思わず見上げた。



「向こう行け」



リョウが冷たく顎を向けると、レオは大人しく立ち上がってリビングから出て行ってしまった。

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