第79話

「あたしも普通に高校行ってたら、さ。彼氏とか、居たのかな」



……ちょっとだけ、憧れてたな。


確かに中学の頃偶に学校に行くと、たまーに、告白とかされてたなぁ。


……あたしにキラキラした世界は向いてなくて。


告白されたとしても、学校だってあまり行けないから、いつも断って。


でも……好きな人くらい欲しかった。


……普通の人にとって当たり前とも言える、普通の望みすら叶わなかった。



「そりゃ出来るだろ。俺のパシリにしても良いな」


「レオのパシリなんてならないよ」



言いながら、足首を擦り合わせた。


どき、どき、さっきから鼓動が嫌に逸り、囃し立てる。


「ねえ、レオ」


「んー?」


顔にぺたりと笑顔を張り付けたまま


「リョウ、は………その………彼女、いるの?」


胸に浅く引っかかっては抜けない棘を零した。



「リョウ?本人に聞いたら?」


「…………だって、」


「なにしてんだ」



反論を言おうとすれば、穏やかな声と共に、背後からあの香りがあたしをつつむ。


ソファー越しにリョウがあたしを覗き込むと心臓が高鳴っては早鐘を打つ。なのに、頭が追いつかず、え?と息を飲んだ。



「リョウ、居たの?」


「あぁ。今まで電話して……長引きそうだから、レオを先に向かわせた」



さぁ、って言ったの誰よ!!


確信犯のレオを睨みつけ、べっと舌を出した。

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