第76話

ピンポーン、


………リョウじゃ、ない。


物音に敏感な耳は、一瞬、びくりと身体が弾むけれど、心は落胆の色を隠せない。


ロックを解錠すれば、暫くしてドアが勢いよく開いた。



「よーっす、寂しかった〜?エマちゃーん」



案の定、そこから現れたのは制服を着崩したレオなので、ちいさく口を尖らせる。



「寂しくない」


「可愛くねー」


「リョウは?」


「さぁ。まだじゃね?」


「そっか…」



平日も休みの日も、この部屋にはカナメかレオが来てくれる。


特に、カナメは平日の日中も偶に来てあたしに勉強を教えてくれる。知識は生きていく上で自分の力になってくれるらしい。


あの二人と一緒に過ごすのはもう慣れたもので、一人でいるよりずっと気が紛れる。


だけどやっぱりリョウと一緒に居たくて、リョウが帰るまで心はずっと落ち着かない。

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