第67話

「………お前、頭おかしいよ」


「おかしいよ……とっくに壊れてる」



きっと、あたしの脳は、家族がいなくなったあの日から、正常に作動していない。


正解、か、間違い。

イエス、か、ノー。


二択を必死で目を凝らして探してきた。


リョウはあたしの首から手を離すと、首筋をゆるりと撫でた。


「…………じゃあ、お前の身体は俺が予約しておくから、他の男に売ったら本気で殺すからな」


「…………わかった」


「本当に分かってんのか」


「…………わかってるよ」


「…………お前さぁ、簡単に売るとか言うな」



あの答えは、正解じゃなかったのかな。


ツンと口を尖らせてみせれば、リョウは首に置いた手を離してあたしの頭をもみくちゃにした。



「…でも、どうせあたし、汚いし」



今更……と、自嘲したように笑ってみせると、リョウは長い溜息を零し、あたしの服の釦を外しはじめた。



「え、ぇ…リョウ……?」



リョウは応えもせずにお腹の辺りまでボタンを外すと、器用にあたしを抱き抱えた。


何かを予感めいて、足をバタバタと動かす。



「リョウ!?下ろして!?」



寝室に連れて行かれるとばかり思っていたのに、意に反した行先は、バスルームだった。

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