第64話

………本当にカナメが言った通りになってしまった。


でも、それって……全部をリョウに甘えてもいいのかな。


それがあたしの正解?


無駄なことはするなと言うレオ。


何かをした方が良いと言うカナメ。


何もしなくて良いと言うリョウ。


どれが正解、何が正解?


空っぽの脳みそに聞いても答えは返ってこない。


でも、何かの役に立たないと……。



「っ………じゃあ、バイトする」


「……なんの為に」


「今日買ってもらった服とか、毎日の食費とか、色々出してもらってるし」


「いらない」


「……でも、いずれは、自分で生活出来るようになりたいし」


「…」


「そのための、準備はしておかないとダメじゃん」


「ここに居れば良いだろ」


「……で、でも、ずっとは……ダメでしょ?」



ぎゅっと拳を握り締めると、リョウの口から長い息が漏れ、吐き出された紫煙があたしまで届く。

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