第62話

なおも不安は消えない。す、と視線を背ければ、それとほぼ同じタイミングでワンピースの裾を摘まれ、ふわりとした素材が膝下で揺れる。


「レオと買った服、これか」


「うん。ワンピース、久しぶりに着た」


どうかな、と、立ち上がってみる。しかしリョウのタレ目がちな瞳は射抜くようにあたしを見つめるのに、何も言わない。


……て、あたしの服なんかどうでもいいよね……


「そんな格好が好き?」


「え、あたしは別に……リョウは?」


「脱がせにくい服は好きじゃねぇな」



脱がせ……?

どういう意味だろう、丸くてぷっくりとした釦が沢山付いてるのがお気に召さないのかな。


リョウの反応に、少しばかりの不安を覚えるけれど、反応を見る限り、この服を買った事が間違いであることは明らかだ。


「……あ、明日、返してくる」


「あ?勿体ねぇことするな、ばか」


「良いの?リョウ、嫌いじゃないの?」


「悪くはねぇよ」



悪くはない、口では肯定的な意見なのに、態度は不機嫌なリョウ。

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