第54話

「もうイイ〜?出来たよーん」


「早いな、相変わらず」


「すき焼きって時間掛からなくね?」


「言われてみれば……そうかもな」



レオが声をかけると、カナメはその体勢をやっと解いてくれた。鍋の中には馴染みの料理が完成していた。


でも……待って、人参とか椛型だし椎茸も飾り切りが仕込まれている。


これを、この男が…!?


金髪の男と見比べても、軽いカルチャーショックを隠せない。


唖然としていれば、レオはふふんと鼻を鳴らす。


「すげーだろ、尊敬してレオ様って呼んでもいいぞ」


「それは、無理……かなぁ 」


「あぁ?お前年下の癖に生意気!」


「ごめんな、エマ、煩かっただろう。俺が付き添えれば良かったな…」


「ちょー失礼!楽しかったよな〜、エマ」


「うん!楽しかった。ありがとうレオ」



素直にお礼を述べると、お礼を言うあたしがあまりに意外だったのか、レオは瞬きも忘れたように固まってしまった。やっぱり失礼な男だ。



「じゃ、カンパーイ」



お酒の事でカナメとレオは少し揉めていたけれど、結局レオが負けて麦茶で乾杯をした。



「ちょ、それ俺が育成中の肉!」


「あぁ?エマに食わせろって言われてんだよ」


「はぁ!?リョウ居ないし良いだろ別に!」


「良くない。ほら、食べられる前に食べて」


「ありがとう」



レオを宥めている様子を見れば、それだけでカナメは常識人だと思った。

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