第52話
リョウとばかり思っていたのに、そこに立つのは見知らぬ男だった。
いや、違う。厳密に言うと見知らぬ人ではない。ここに来て最初の夜、リョウと話していた人だ。おそらく、レオもそうだ。
そもそも、リョウもレオも、この人も、なんでこんなに、巨人のように大きいんだろ。
……あたしの背が低いだけかな。
爽やかな黒髪マッシュで知的な雰囲気のその人は怪訝そうにあたしを見下ろす。
短い眉の間には幾つも線が入っていて、奥二重の瞳は少しだけ怖い。食べられてしまいそう。慌ててレオの近くに駆け寄り、レオの身体からそっと覗く。
「カナ、メガネ掛けろよ」
「ん、ああ、忘れてた」
カナと呼ばれたその人は、食材が入ったビニール袋をレオに渡し、スクエア型のメガネを掛けた。
目付きが頗る良くなる訳でもなくて、メガネ越しとは言えやっぱり怖い。
「リョウは〜?」
「まだ掛かるから先に食ってろと」
「よっしゃ!にーく!にーく!」
リョウはまだ帰らないんだ…。
レオは上機嫌になると受け取った袋から野菜を取り出して包丁で切っていく。レオはマイペース且つ単純で羨ましい。こっちはそう簡単に気分も良くならずにソファーに凭れて床に腰を落とした。
すると〝カナ〟があたしの目の前に来て、何故か床に正座した。
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