第51話
茶色の液体が鍋の中でぐらぐらと気泡を生み出していると、弾けた泡からなんとも言えない芳しい香りが鼻腔をくすぐる。
「いい匂いする」
「味見する?」
うん、と頷けばレオは小皿を渡した。
薄く盛られたそれを飲み干すと、今まで味わったことの無い深いコクが味覚を潤す。
「美味しい!どうやって作ったの?」
「内緒」
フフんと得意げに鼻を鳴らすレオに、ちょっと負かされた気分でもある。
「リョウにも作ったら喜ぶかな?」
「あいつ、あんま食わねーから意味無くね?」
「そうなの?」
でも、確かに夜も食べてるとこは見ないな。
あたしの隣でタバコ吸ってるし。
思い返していると、レオはニヤリと不敵な笑みを浮かべて見下ろした。
「エマちゃん、なぁんで作りたいの?」
「タダで置かせて貰うのが……申し訳なくて」
「リョウ、何かしろって?」
「んーん、何も言われてない」
「だったら、余計なことしない方が良くね」
余計なことなのか、これは。
そもそもあたしがここに居る時点で余計なことな気がする。
何も言い返せずにいると、扉の向こうで物音がした。
きっと、リョウだ。
頭に朝別れた人の顔が思い浮かび、すぐに駆けつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます