第45話

急展開に頭が追い付かない。


しかし手だけは言われた通りにしっかりと回し、レオのシャツを掴む。


タイヤが擦れる音が消え、猛スピードでバイクを走らすレオ。後ろから聞こえる爆音たちは変わらずあたし達を追い掛けている。



一体、何が起こってるの!?



「あーぁあ、うっぜーハエ」


「だ、大丈夫なの!?」


「よゆーっしょ!」



自信たっぷりにレオが言うので、心は幾分か安心を取り戻す。



白昼堂々の追いかけっこは、結局途中で現れたサイレンの音をきっかけに本当の逃走劇となった。



警察沙汰になるとあたしの身元も危ない。


…たった四日間だけでもあの家を離れただけ、幸せだったと思おう。



今度こそ束の間の覚悟を決めるけれど、レオは無事、見事に逃げ切ってみせた。




お陰で、家に着く頃には何もしていないのに疲れてしまい、真っ白なリビングに入ると全身の力が抜けて床に座り込んだ。


レオは「楽しかった〜」なんて言いながらバイクの鍵をジャラジャラと人差し指で回し、呑気に鼻唄を歌っている。


こっちは変に気苦労したって言うのに。


じっとりとその様子を睨めつけてはため息を落とす。

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