第44話

似たようなエンジン音が耳に届く。それがあたしたちを囲んでいる気配がした。



「よぉ金獅子ぃ、一人か」


「一人だよ〜ん。見てわかんねぇの?」



ドスの効いた知らない声がレオに向かって放たれた。知り合いの様だけど、声色を聞く限り仲は良くなさそうだ。


心臓が嫌な汗をかくので、レオのシャツの模様を穴が空くほどみつめる。



「桐島どこいんだ、ゴルァ」


「知らねーよ。日本語喋ろゴリラ」


「あぁ?そりゃてめーの女か、あ?」


「俺の女じゃねぇよ。ほっといてよ〜今度遊んでやるから」


「はいどーぞって、言うか、ばーか。」


「えぇ、何したらいいのじゃあ〜」


「その女、置いてけや」



……ドキリ。



一度大きく心臓が跳ねると、次からはやたらと鼓動があたしは急かした。


……あたしは別にどこに居たって構わない。


なんなら死のうとしていた身だ。どうだっていい。


レオはなんだかんだで買い物にずっと付き合ってくれたし、面倒だと言いつつ、一様に優しかった。


レオだけでも逃げれるなら、あたしは……あたしは。


回した手にきゅっと力を込めて、口を開いた。



「レオ、あたし、」

「誰がお前にやるかよ、ばぁーーーーーーーーか」



あたしの声をかき消す程大声を出したレオは、エンジンを急に蒸すと猛スピードでバックした。

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