第40話

あの家族の所有物だったあたしは、ずっと自由が欲しかった。


待っていても三十になったら自由になれたかもしれない。


叔父さん達との約束で、十八から風俗で働いて、三十になったら自由にして良いと約束していたからだ。


……だけど、リョウに拾われて、自由は既に手に入りつつある。



ご飯も、温かいお風呂も、こうして服さえもリョウはあたしに与えてくれる。


あの日から毎晩、お風呂上がりには髪を櫛でといて、ベッドに眠れずに床で寝そべるあたしに膝枕をしてくれる。


リョウはあたしが眠ったあとにどこかに出掛けているらしく、深夜に物音で目覚める時は毎回ベッドに寝かされている。



昼間も一人で家の外に出たら迷子になるからと、外出は禁じられていたけれど、それ以外は部屋で自由にさせてくれた。



一週間足らずでリョウに随分と懐いてしまったあたしも、相当単純な頭をしている様だ。



「めんどぉ…物欲ってのが無いのかよお前」


「こんなに沢山服買えたからすごく満足。明日めちゃくちゃ悪い事起きそう」



おそらく、リョウに拾われた時点であたしの欲求は随分満たされているのだ。

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