第36話

そのショップには山程服が置いてあるけれど、どれも同じに見えて、どれが良いか分からない。


ハンガーを取って、何となく身体にあて、全身鏡に映しては戻す……を何度か繰り返すと、その鏡の中で思い切り不機嫌な顔をしているレオと目が合う。


不機嫌というより、苛立っている、に近い。



「お前なあ……服選んだ事ねーのかよ」


「無いよ」


「え、めんどい。すいませーん」



今めんどいって言ったよね?遂にめんどいって口にしたよね?


レオだって、最初から気怠そうに不機嫌な態度を変えないからめんどくさいんだろうなって思ってたよ、だからあたしも口答えせずにいたんだけどなぁ!


苛立ちを隠さずにレオを見上げていると、店員さんがやって来たので急いで顔のシワをなおす。



「こいつの服テキトーに何種類かお願いします!」


「は〜い、かしこまりました〜」



レオはその女性にあたしを任せるつもりだろう、やたらと豪華に装われた椅子に腰掛けてケータイを触り始めた。

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