第34話

「おい、エマ」



少し掠れたハスキーボイスがあたしを乱暴に呼ぶから「なに?」と失礼な男に向かって目を尖らせる。



「俺は〝レオ〟。後からお前の事めっちゃ聞くからな!とりあえず、行こ」



尋問の予告をされるけれど、従うしかないあたしは「……分かった」と頷く。



レオは大きなバイクに乗って来ていたので、後ろに乗せてもらった。



やっとの思いで後部座席に乗るけれど、自転車しか乗ったことの無いあたしは、生身なのにこんなにも車道が近いのがやたらと怖くって、必死の形相でレオにしがみついてみせたら「ちょ、内臓!内臓痛い!」とか言い始める。


しかし、残念ながらあたしは聞く余裕を持たない。


エンジン音も五月蝿くて、こんな思いをしてまで乗っているレオを尊敬する。


だけど、大きな背凭れの伸びた後部座席は見た目と裏腹にクッション性が抜群で意外にも乗り心地は悪くなかった。五月蝿いけど。


ようやく春先らしい暖かい昼下がり。大通りの桜並木を通り抜ければピンクのカーテンが真上に広がり、思わずがしりと掴んでいた手を緩めそうになった。

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