第31話

今日は19時になるとリョウはあたしのご飯を持って帰って来た。



「自分の服が無いと不便だろ。明日、買いに行け」



自分は何も食べずにコーヒーを飲むリョウは、突如として命令するものだから、キョトンとして食べるのすら忘れてしまう。



「リョウも行くの?」



コンビニのチキンドリアをスプーンに掬ったまま訝しげに訊ねるとリョウはあたしの手からそれを奪った。


リョウはスプーンに装ったチキンドリアへ静かに息を吹きかけ、あたしの口の前に差し出すと「あーん、」なんてやたらと色っぽく口を開ける。



「あ……んぅ、…………一人で食べれるよ」


「……熱いのは買わないようにしなきゃな」


「……あたしは、食べないの、慣れてるから……」


「それくらい食えるようになれ。いつも半分以上残すだろ」


親のように宥められ、つんと唇を尖らせた。


ほぼ何も食べない日々を送ってきたからか、リョウがご飯を買ってくるけれど、その殆どが胃に入らないのだ。


それに……リョウだって食べないくせに。


スプーンを奪い返して息を吹きかけていると、リョウは悲しげに笑う。だから、少し熱いうちに口の中に放り込んだ。

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