第25話

包み隠さず言い終えると、俯いていた視線を上げる。男は無機質な表情のまま「なあ」と小さく口を開けた。



「ここに、そんなやつら居ないし、来ない」


「……そう、なの?」


「それに、掃除も料理もする必要は無い」


「…しなくていの?」


「あぁ。俺が勝手にするから、お前も勝手に生きてろ」


……そっか。

それが目的で、拾われた訳じゃないんだ。


はっきりと断言され、鉛になっていた心がやっと少しだけ軽くなった気がした。


「……ベッドに寝れなかったら、ソファーに寝ろ。それでも無理なら、床でも良いが、俺を呼べ」


あんたを?…どうして?


「…何で?」



素直に首を傾げると、ポン、と頭に男の手が乗る。



「床だと背中痛ぇだろ?」


「慣れてるから、平気だよ」


「ダメだ。お前が寝るまで俺がお前の枕だ」


「…ほんとに?」


「あぁ、約束だ」



男は静かに微笑むと、あたしの頭をくしゃりと撫でた。


お陰で髪の毛は簡単にボサボサにされるので、慌てて手ぐしで整える。

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