第20話
「電気、消すぞ」
「うん…」
「おやすみ」
抑揚のない声が終わりを告げると、パチン、と壁のスイッチの音と共に光が消える。男が開けた扉からリビングの光が漏れるけれど、すぐに、吸い込まれるように消えた。だけどあたしは、足を動かすことも出来ずに立ち竦む。
真っ暗闇が広がる、見知らぬ部屋。
ベッド……嫌、だな……。
聞こえもしないのに脳裏に荒い息遣いが木霊する。
嫌だな、嫌だ。
腕に巻かれた包帯を掴む。痛みは感じず、腕を掴んだ感覚だけが伝わる。
汚い天井、脱ぎ捨てられた下着、飛び散る体液、おもちゃのように扱われる身体。
………嫌だ。
ぺたりとその場で蹲り、丸くなって目を閉じた。
明日はこない。
今日あたしは死んだんだ。
ここは多分、天国だ。
残酷な程に綺麗な白の世界。
地獄が終わる、きっとこれは夢。
スっと息を整えて、
1、2、3……。
ゆっくり、ゆっくりと数字を数える。
1、2…。
心を落ち着かせるように、静かに。
1、……。
やがて、あたしは深い眠りに落ちた。
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