第18話

ダークチョコレートみたいな色の髪の毛は緩やかなパーマがかかっていて、目元がやっと見えている状態だからあまり表情が分からない。


密度の高い睫毛が囲むタレ目がちな大きな瞳、すぅっと通った鼻筋。


雪景色の様な真っ白な部屋を背景に、真っ黒な服を着た男がタバコを吸う横顔は彫刻みたいで綺麗だと思った。


指先も女の人みたいに滑らかで、タバコを吸うだけで様になっている。


細くて華奢な体躯は身長もあたしと頭ひとつ以上は違っていた。


あたしが言うのは何だけど…女の人に困っている感じには見えない。


あまりに見過ぎていたのか、急にその瞳がこちらに落ちてくる。



「……何だ」


「いや、何でも」


「それ、嫌い?」



〝それ〟が示すのは、先程から進んでいないマグカップの中身だろう。



「んーん、暖かい飲み物飲んだの久しぶりで、熱すぎて…」


「猫舌かよ」


「……そうかも」



……本当に、何でだろう。



何度か息を吹きかけて、疑問と一緒に飲み込んだ。

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