第13話

フェンス越しにそれらを見守っていれば、後ろに微かな気配を感じた。




「上手に死ねるといいな」




相も変わらず怖い程、凪いだ声。




「死ぬでしょ」


「運が良けりゃあ10階からでも死なねぇやつもいる」


「…」




普通、そういう事言うかな。


今から致そうとしているのに、まさに突き落とそうとするかな。


長く白い息を吐き出していれば、何かに覆われたように風の音が止んだ。




「上手く死んだら毎日化けて出て来い」


「…なんで?」


「俺は偶に此処に居る。話し相手くらいにはなってやるよ」


「…死ねなかったら?」


「拾ってやるよ」


「…なんの為に?」


「だから、話し相手になってやる」




あたしはやっと、随分と高い位置に居るその人を見上げた。

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