第12話

誰でも良かった。


どうでも良かった。




「死にてぇのか」


「……死にたい」


「死なねぇのか」


「……死ねない」



膝に顔を埋めたまま、義務的に答えた。



「そこから落ちれば良いじゃねぇか」



その声は冷たく言い放つ。


越えられないの、フェンスが高くて、飛び越えることが出来ないの。


「……あんたが、落としてよ」


「人に任せるな、自分でやれ」



冷たい言葉だけど、声だけは一様に穏やかだった。


白けた海のように。


俯いたまま、機械的に立ち上がる。


目下に見える大通りに人気はなく、やたらと強く吹く風の音だけが煩わしい。

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