第10話

あの人達もこんな寒い夜に、薄着で、しかも足を怪我したあたしが逃げるとは露にも思っていなかったのだろう。


そこがあの人達の誤算だ。


散々蓄積された恐怖と痛みのせいで


あたしの痛覚はいつの日か無くなった。


怪我をしても痛くないから


別に死んでも構わないから



二階のベランダから飛び降りた。



生きてた、体も動いた。


二階じゃ死ななかった。


だからとにかく走って逃げた。



この世界に頼れる人は居ない。



逃げても同じ。身元がバレて、連れ戻されて、同じ生活が待っているだけ。



だからもう、終わらせようと思った。




あの日常に慣れてしまっているのももはや死んでいるのと同じだった。

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