第9話

あたしの家族は五年前に居なくなった。


その時〝しあわせ〟な人生は幕を下ろした。


幸せって、あたしが生きている限り、ずっとずっと続くと思っていた。


……初めて知った。幸せって、貰った分だけ後から鏡のように不幸が反射するって。



身元がなくなったあたしの引き取り先で、唯一手を挙げたのは〝保険金〟に目が眩んだ叔父さん家族。


地獄の幕開けだった。


五年……。

耐える気力も心もポキリと折れた。


だから、今日で最期にしようと決意した。



殺されてもいいと思った必死の抵抗。

殺される代わりにベランダに放り出された。



その場で声を上げても近所の人はあたしの言うことは聞かない。


叔父さんは〝善良な人間〟を演じているから。


警察に言っても、先生に言っても、信用してくれない。


叔母さんも〝善良な人間〟を演じているから。



悪い子はいつもあたし。


身寄りのないあたしを拾ってくれた〝善良な家族〟を困らせるあたし。


後ろ盾のない子供が一人で生きることは絶望だった。


希望が潰えるのは一瞬だった。

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