第504話

「ゆいか?大学、行くぞ。」


「チッ、」



もうすぐ卒業の蓮が私を急かすも、奏が睨みつけた途端肩を窄めて彼方を見た。



「奏ってば、今日は会議があるから。マジ急いでよ!」


「・・・お前の骨が折れるのと2・3分待つの、どちらか選べ。」


「いやいや、どっちも嫌だから!」



鋭い突っ込みが冴える隼人は、ロシアから帰国したばかり。



「ちょっと~、隼人よく平気だねえ?

俺もうクタクタ~。ロシアの猫ちゃんってすんごいよねぇ?」


「・・・いっそ死んでしまえ。」



奏に悪態をつかれているのは、隼人のロシア行きについて行った弘人。



どうやら現地で2人してめくるめく夜を過ごしてお疲れの様子。



「・・・ひぃにいに?」


「ん?なぁにぃ?」



甘々顔の弘人の服の袖を引くのは、可愛い秋。



「秋、こっち来い。今こいつくせえから。1ヶ月出禁にするし。」



素直に奏の元へ来た秋の頭を撫でながら、『子猫ちゃん』の匂いに眉を潜めた奏がそう吐き捨てた。



これ、ロシアじゃなくて日本の子のだろうな。



苦笑いでそう思っていると、いつもの通り繰り出される華麗な土下座。



「ゆいか、荷物は車に運んでおいたから。」



「お兄ちゃん、ありがと。」



優しく微笑むお兄ちゃんにも、奏は鋭い視線を向けた。



「姐さん、梅昆布茶、容れやした。」


「鉄さんもどうですか?」



奏が片っ端から八つ当たりをしている隙に、鉄さんとソファーに座って梅昆布茶をすすった。



鉄さんは漸く怪我も落ち着き、ほぼ無理矢理だけど奏の運転手に戻っていた。

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