フィナーレ

第503話

西も片づいたと、翠さん自ら電話がきた。



『この度は、ご迷惑をおかけいたしました。

ご迷惑ついでなのですが・・・

来月そちらへ伺うことになると思います。申し訳ありません。』



「ふふ、翠さんは謝ってばかり。

ここは【ごめんなさい】より【ありがとう】がいいんですよ?」



『・・・・ありがとう。』



「・・・はい。では、来月お待ちしています。」



翠さんの柔らかになった声音に、私の顔も緩む。


電話を切ろうとした瞬間、



「・・・翠、気安く電話すんじゃねえ。」



電話を取り上げられ、翠さんに放たれた理不尽な命令。



(あとでいつでも電話してきてかまわないと、メールしておこう。)



ブチリと極悪顔で通話を切っている奏を見ながらそう思った。



「ゆいか、翠の電話になんか出るな。

産気づくだろが。」



意味不明なことを言って私を腕の中に包み込む奏の顔は嬉しそう。



「・・・結局寂しかっただけでしょう?」



クスクス笑う私に、ふてくされた奏が抱きしめる腕に力を込めた。



「・・・ちげえし。」



クスリと微笑んだ私は、奏の唇を塞いだ。



チュッとリップ音を響かせて離れれば、不満そうな目が私を見つめている。



「春くんに、笑われるよ?」



そう言って出たお腹を撫でれば、私の手ごと包み込む、奏の大きな手。



春は、男の子。



女の子は、夏か冬に期待。



「またライバルが増えたし。」



ため息をつきつつも、奏の表情は嬉しそうだった。

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