第497話

「彼が動けば、動く財閥の数は計りしれません。

今まで腰を上げるつもりがなかっただけです。

そんな彼の、大切な方を傷つけた。

新城奏は、私とあなたの問題など気にも止めませんが、【アスモデウス】と一緒に、゛ついでに゛あなたを潰す手伝いをしてくださるそうです。」



「フフ、彼がどんな人物かは知らないが、私を潰すなど夢物語だ。」



鼻で笑う男に視線を滑らせた龍綺様は目を細めた。



「奏は夢物語を簡単に実現させてしまう男や。現に名だたる財閥に自分の側近を派遣して声をかけてくれた。

やからペンドロヴィッチの系列会社は僕の指示に従ってくれてるわ。」



「はっ、そんなわけ・・・」



「あるんやなそれが。現に君らが来日しやすいように一端手を引いてもろうた。」



2人の目が驚愕に見開かれる。



「やからはよ帰り?今頃乗っ取られてるで?君の会社。」



「っっ、ケイシー!」


「・・・確認致します。」



ケイシーが携帯を耳に当てて足早に部屋を去って行った。



「会社はどうにかする。だから戻っておいで、私のアンドロ。」



欲情を胎んだこの目を見るのは久しぶりだ。



ベッドに組み敷かれた時の屈辱感、心とは裏腹に高まる身体、この男に慣れ親しんだ身体は、私の意志とは関係なく機能していた。



私の怯えを察したのか、頭に扇子が乗る。



「翠?大丈夫や。僕が君を手放したりしたらそれこそゆいかに殺されてまうよ。」



フワリと微笑んだ龍綺様を見て、私の強ばっていた私の身体から力が抜けていく。



「はい、私は翠です。アンドロではありませんから。

私のあるべき場所は、龍綺様のお側です。」



満足そうに頷いた龍綺様に、私の口角も上がる。



「!!アンドロが笑うなんて・・・」



男の息を呑む声が聞こえて、不快さに眉を潜めた。

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