第496話

side 翠



龍綺様が一服しだした。



これで暫く軽口も出ることはないと、ホッと安堵の息を吐いた。


龍綺様は、大の煙管好き。



現に今も煙をくゆらせてうっとりと彼方を見ている。



龍綺様から視線をはずして2人を見た。



「あなた方には、私どもだけでは到底太刀打ち出来ませんでしたが・・・

あなた方が手を組んだ【アスモデウス】が怒らせてはいけない方の大事な方に手を出しました。」



あの、孤高の虎を、刺激したのだ。



「・・・ソウ・シンジョウのことか?」



男は嘲笑を含めて吐き出した。



「・・・新城奏を、侮っておいでですね。」



確かに、ペンドロヴィッチから見れば彼はわりかし大きな会社の社長に過ぎない、しかし・・・



「そりゃぁそうだろう?日本のちっぽけな会社の社長だからな。」



バカにしたような声音に、龍綺様から笑いが漏れた。



「フッ、」



「何が可笑しいっ!」



龍綺様は鼻で笑っただけで、すぐに視線を宙に移してしまわれた。



「彼は、物事に執着もなく、熱くなることもありません。

それなのに、当たり前のように覇道を歩んでいる方です。」



「日本などにそんな逸材がいるはずがないだろう?」



バカにした様子の男を見つめていると、再び龍綺様から嘲笑が漏れた。



「ちっぽけな日本の会社の社長にすぎない。確かにそうやなぁ?」



クスクス笑う龍綺様は煙管を灰吹きに当てて灰を捨てた。

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