第494話

「ァ、アンドロッ、お前はまさかこの男とっ!」



ワナワナと嫉妬の視線を僕に送る男にため息が漏れた。



「はぁ、僕ってそんなに男もイケる様に見えるんやろか?」



後ろの翠を振り向くと、無表情な翠の口角が少しだけ上がる。



「肯定も否定もなさらないからです。

本当に真琴様に怒られますよ?」



「ふむ、でもこれは昔から言われてるからなぁ・・・さすがに否定するんもおっくうになってるんや。」



何故か僕は昔から両方イケる思われてた。



「・・・僕、女の子大好きなんやけどなぁ。」



「・・・真琴様にご報告を。」



今の僕の台詞を動画録画していた翠がスマホをイジりだした。



「ちょいちょい、マジで止めてや!

来週来て貰えへんくなるやん。」



「ああ、楽しみにされていたようですよ?せっかく予定を延ばしていただいたのですが、『あれ』を片付けないとまた先延ばしにしてしまいます。」



今まで一瞥もくれていなかった視線を漸く男に向けた。



「っっ、アンドロ。私のアンドロッ、早く私たちの屋敷へ帰ろう。」



今目の前にベッドがあれば押し倒しそうなほど、男の瞳は欲情にまみれていた。



「・・・私は、あなたの性奴隷ではありません。」



翠の感情の無い声が、言葉を紡ぐ。



「性奴隷だなんてとんでもない!私たちはあんなに愛し合っていたじゃないか。

分かった、体の関係だけがイヤだったんだろう?それじゃぁ一緒にデートにも行こうじゃないかティアナ!」



扇子で口元を隠して翠に囁いた。



「ティアナて、お袋さんか?」


「・・・はい。あの男は時折、私が母に見えるようなのです。」



「可哀想やなぁ・・・まぁ、あんなんな方が潰しやすいけどなぁ?」



僕の笑みに翠が目を細めた。

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