第493話

「私のアンドロを返してくれないか?」



男は苛立ちを隠しもせず、視線は翠のまま言葉を紡ぐ。



゛色欲にまみれた目゛



「・・・なるほどなぁ、翠も巧いこと言うわ。」



「・・・、私が、何か?」



何でもないというように、首を振った。



「申し訳ないが、翠は【僕の】やから、返すもなにもあらへんのやけど?」



扇子を振って微笑む僕に、漸く男の視線が向けられる。



「私の息子だぞ。これ以上とぼけるつもりなら、私にも考えがある。」



ニヤリと笑った男に、僕の笑みも深まった。



「奇遇やなぁ?僕もそう言おうと思うてたんや。

これ以上【僕の】翠にその不愉快な視線を向けるなら、僕にも考えがありますよ?」



「・・・なんだと!?」



苛ついた男の後ろから、ケイシーが口を開いた。



「法的に訴えても構いませんのよ?

ジャパニーズマフィアにとって、警察はマズいのでは?

それに・・・我が財閥を敵に回すということは、破滅を望んでいらっしゃるのでしょうか?」



嘲笑を含んだ女の顔を無言で見ていると、背後の翠から殺気が漏れた。




「・・・黙れ。貴様に龍綺様をバカにする資格などない。」



「「っっ、」」



男とケイシーが息を呑んだ。

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