第63話
結局機嫌の悪い奏に嫌がらせされ、蹴りを入れられ。
それでも奏の手は風の様に仕事をこなす。
そんな時だ、奏のプライベート用の携帯が鳴った。
画面をめんどくさそうに見た奏が一瞬眉間に皺を寄せて素早く電話にでた。
この携帯が鳴るのはほぼ『弘人』のせいだ。
奏は会社用、組用、プライベート用と、3台持っている。
俺がいれば俺がプライベート用以外は持ってるけど。
奏のプライベートの番号に入っているのは一般人である弘人と、白虎関係の人間、そしてゆいかちゃん。
必然的に弘人しか鬼電・鬼メールする奴はいない。
最近弘人用の携帯を作ってそれを家に放置する作戦を本気で検討している奏。
しかし今回は違った様だった。
「・・・ゆいか、どうした?」
相手がゆいかちゃんだったのにイヤな予感がする。
「講義は終わったのか?・・・そうか。
フッ、やらかしたのか?・・・ああ、待ってろ、5分で行く。」
奏は電話を切ると、社長室を出るため早足で歩き出した。
「奏?ゆいかちゃんとこ?」
「ああ。軽い発作を起こしてる。お前はここで待機。
俺が必要な仕事は終わってるから後は頼む。」
「・・・了解。」
足早に部屋を去っていった奏を見送ると、机の上に視線を滑らせる。
「・・・ほとんど終わってるし。」
ほぼ無くなっている書類に苦笑いをこぼし、残りの仕事を片づけた。
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