第54話

理性が勝利するも、若干手負った私は、疲れを見せた表情で話を続けた。



「っっ、まさか・・・咲さんは違うよね?」



咲さんを同級生で見たことはないもの。




「・・・はい。私は、清心女子(せいしんじょし)でしたから。」




県内でも、かなり上の偏差値の女子校だ。



「へえ、なんでそこに?」



「はい。母の、母校ですので・・・」



「・・・そっか。」



私がそう言ったところで、弘人がコーヒーを容れて部屋に入って来た。



「はいは~い。お待たせ~。俺の愛のコーヒーどうぞ~。」




「「「・・・。」」」「ちっ、うぜえ。」




完全に元に戻ってるし。



それでもおいしい弘人のコーヒー。



このカフェは、ホットコーヒーだけは、豆をミルで挽いて容れる。



手間だけどおいしさが違うから。



そして気付いたのは、弘人がコーヒーを容れるのがプロ並みに巧いこと。




弘人の容れてくれたコーヒーを、お礼を言って受け取り、一口含む。



「・・・・ん、おいし。」「・・・ちっ。」



私の呟く声に、奏が反応する。



家では「お前が容れたやつの次に上手いな。」なんて、思わず口を滑らしていたくせに。



(私のは欲目だから実質一番おいしいんじゃない。)



イライラしてコーヒーを飲む奏を横目で見ながら、小さく笑ってしまう。

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