小さな抗争、大きな抗争

第50話

「その前に、そこの女。」



新城さんの声に目を向けると、とても冷たい目が此方を見つめていた。



震え上がるほどの恐怖を感じるも、ギュッと拳を握ってその冷たい目を見返した。



ゆいかさんに向ける、暖かさは一切なくて、その声色も冷たさしか感じない。




「お前はこれまでのことを全て晒せるか?そしてこれからどんなことがあろうが逃げずに事実を受け止められるか?」




私はぎこちなくだけど、頷いた。



あいつから逃げられるなら、どんな事実だって受け止める覚悟があるから。



頷いた私を確認すると、新城さんは続ける。



「ここにいるゆいかは、俺の妻だ。」



「・・・・ぇ。」




ゆいかさんが新城さんの奥さんだったなんて・・・



父が、



「あれは女には一生靡かない。」




そう言っていた。



そんな新城さんが結婚していたなんて。



自分がかなり閉鎖的な生活を強いられていた事実を目の当たりにされた瞬間だった。



別のことにショックを受けている私を余所に、新城さんは続ける。



「俺の妻というだけで、こいつの敵は腐るほどいる。

一緒にいるだけでお前も狙われる対象になることもあるだろう。

勿論それは新城が警備するが・・・覚悟がねえとコイツには近付かせねえ。」



そう言った新城さんに、私は強い目を向けた。



「はい。覚悟は出来ています。じゃないとさっきの講堂で頷いていませんから。」



そう言った私を新城さんは鼻で笑う。



「まぁいい。脅されてだろうが、ゆいかを裏切れば、その時は兄弟諸共俺が消してやる。」



そう言った新城さんの目は本気で。



私は息を呑んだ。

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