第49話
「ゆいか、なにがあった?」
新城さんの質問に、ゆいかさんの瞳が揺れる。
ゆいかさんはその質問には答えず、顔を私に向けた。
「・・・あの、咲さん?」
「は、はい。」
戸惑う私に、ゆいかさんは申し訳なさそうに眉を下げる。
「ごめんなさい。」
「・・・・ぇ。」
友人になったことへの後悔からの謝罪かと、色を失う私を見て、ゆいかさんは慌てて訂正する。
「違うの。友達になれたのは嬉しい。
でもね、私と関わることは、今のあなたの状況を悪化させてしまうかもしれない。」
「・・・。」
俯く彼女に、罪悪感が募る。
「私と似た体験をしているあなたを放っておけなかった。
あの明里って人も気持ち悪いし。頭に血が上っちゃって。」
「・・・お前。またなんか言い返したんだろ。」
おもしろそうにゆいかさんにそう言った新城さんからは、全く緊張感が伺えなかった。
「・・・もう、奏?今真面目な話を・・・」
そう言いかけたゆいかさんの口を、新城さんの親指が塞ぐ。
「いい。この女をダチにしてえんだろ?それには【陰】、いや、柊の馬鹿息子が邪魔。なら排除してやる。心配すんな。」
そうさらっと言った新城さんの目は笑っていなかった。
「でもさ、彼女の・・・」
「姉と弟は新城でなんとかしてやる。
ダチにしてえんだろ?言えよ。俺がそのためならどんな野郎だろうが潰してやる。」
そう言う新城さんの狂気に歪む顔に、部屋中の人間が顔色を真っ青にしたのに、ゆいかさんの顔は歓喜に染まっていた。
「奏、彼女と、友達になりたい。助けて、あげて?お願いします。」
そう言って、新城さんの腕の中で頭を下げるゆいかさんに、私の目から涙がこぼれた。
そして、そんなゆいかさんを見た新城さんは満足そうに口角を上げ、そっと耳元で囁く。
「今日は寝かさねえから。」
言われたゆいかさん含め、その場の皆が頬を赤く染めたのは、言うまでもない。
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