第47話

「はいはーい、ゆいかちゃんお呼びで・・・ちっ。」




小窓から顔を覗かせたカッコいい男の人が、私の手を離し、黒いソファーに座り込んだゆいかさんを見て、ニコニコしていた顔を険しいものに変えた。




すぐに姿を消して、もう一つのドアから険しい表情のまま出てくる。



そんな彼は護衛の人に厳しい目を向けた。




「軽い発作だな。なにがあったの?」



そう聞く彼に、護衛の人は姿勢を正す。



「は、【陰】の人間と接触しました。それは蹴散らしておられたんですが、この女の・・・」



言いにくそうな護衛の人の目線の先を辿って彼の目と目が合った。




その瞬間、高鳴る心臓。



彼の色素の薄い目に、魅せられる。




彼は一瞬だけ私を見たけど、興味を失った様に、再び護衛の人に視線を戻す。



「この子がなに。」



無機質な声に、背筋が寒くなる。



言い淀んでいた護衛の人は、意を決した様に口を開いた。




「・・・【陰】の総長の女みたいですが、どうやらゆいかさんと同じ様な体験をしているようです。

さきほど話を聞いてそれで・・・」



「・・・そう。で?奏は勿論来るんだよね?」



「はい。先ほどゆいかさん自ら電話していましたから。あと5分も・・・」




護衛の人がそう言ったところで、





ガツン!!!!





先ほど私達が入ってきた方の扉が、壊れるのが心配になるほどの勢いで開いた。




その扉から、姿を見せたのは、漆黒の・・・凄く、綺麗な男の人。




「・・・ゆいか。」




彼は、愛おしそうに、ゆいかさんの名前を紡ぐ。



すると、ゆいかさんが弾かれた様に顔を上げて、さっきまで賢明に作っていた無表情を崩し、縋るように手を差し伸べた。




「・・・奏。」




彼女がそう呼んだ途端、一気に縮まる2人の距離。

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