第44話

そんなある日・・・



「いやっ!・・・やめて!」



「ちっ!」



抵抗する私に、光樹が身体を離した。



ホッと安堵した途端、お腹に激痛が走った。



「いっ!」



目の前には、私のお腹を殴ったらしき光樹が、顔を歪めて見下ろしている。



怯える私に、冷たい眼孔を近付けると、こう言い放った。




「これからは、お前の心が手に入るまでこうする。

ついでに【嫉妬】も教えてやるよ。」



そう言って微笑んだ光樹は、私を激しく抱いた後、なぜか私をベッドの前のイスに括り付けた。





そして部屋から出て行ってしばらくして戻った光樹は、明里さんの腕を引いていた。




「ちょっと!光樹、どういうっ!?」





私を見て訝しげ問う明里さんの口を強引に塞いだ光樹は、



「鳴け。俺の身体がどんなにいいのかをこの女に知らしめろ。」

 



そう言って明里さんをベッドに投げた光樹。



私は縛られたイスの上、目の前で繰り広げられる情事を、なんだか他人事のように見つめていた。




「あっ!光樹っ・・・激しっ、もっと!」




「そうだ。もっと鳴けっ!」





彼は私に【嫉妬】を教えたいらしい。



馬鹿みたいだ。私に気持ちがないのに、嫉妬なんてするわけがない。



でも、私は正直この状況に助かっていた。



だって、光樹が彼女を抱いている間は、【私】は穢れない。



私に勝ち誇った目を向ける彼女も、優越感に浸れるじゃない。



私はただ、この光景を無表情で見ればいい。



それでも彼女を抱く前に必ず私は穢される。



そんな毎日を繰り返し、私はお姉ちゃんと少しでも繋がりを持っていたかったから、日帝大学へ猛勉強をして入った。




そんな時、出会った彼女。



新城ゆいかさん





新城を名乗ったと言うことは、新城組の人なんだろうな。



護衛を連れた彼女は、明里さんが仕組んだ、私を避ける輪の中に、何の抵抗もなく入り、隣に座ってきた。



なんだか不思議な人で、名前は名乗らないし、お互い口も聞かない。



だけど、隣り合うこの空間が、とても気持ちよかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る