第37話

家族に心配をかけたくなくて、光樹の事は黙っていた私。



でも、毎日のように学校が終わると、無理矢理乗せられる黒塗りの車、それは勿論、柊組のもので。



運転手の口からお父さんに報告が行ってしまった。




「咲?光樹さんのしていることは、お前にとって嬉しいことか?」



ある日そう聞かれ、必死で首を横に振った。



彼は今のところ、放課後の送り迎えで満足しているけど、毎日感じる彼からの雰囲気で、それ以上を求められることは、想像に容易かった。



お父さんに、縋りつき、懇願する。



「お父、さっ。・・・助けてっ!」




絞り出すように口に出した私の本音。



それは、日々感じていた恐怖とストレスが、爆発した瞬間だった。



「お前はすぐため込むなぁ。父さんとしてはもっと頼って欲しいぞ!」



そう言って私の頭を優しく撫でながらニッコリ笑ったお父さんに、私はとても安堵した。



次の日から、彼の迎えはパッタリと無くなった。



「お父さん、ありがとう。」



その日の夜、帰ってきたお父さんにお礼を言った私を困ったように見つめたお父さん。



そんなお父さんに困惑してると、



「んー、親父に頼んでみたんだが・・・婚約させてくれるならやめると言い出してな。」



「・・・なに、それ?」



呆然とする私にお父さんは眉を下げる。



「大丈夫だ。親父も事情を知ってるから、助けてくれるだろう。」



「・・・本当に?」



「まだ俺が自分で何とかできるしな。いざとなったら親父に頼るさ。」



そう言って、私を安心させるように笑ったお父さんの笑顔は、そう遠くない未来に、二度と見れなくなった。

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