第36話

side 咲


私のお父さんは生まれた時から極道で。



柊組の柊俊也(ひいらぎしゅんや)組長とは、同級生でもあり、親しい友人だった。




「あいつは無二の友達だ。」



なんて、照れもせずに言うお父さんを前に、羨ましく思ったのを覚えている。



お母さんは、私たちを育て上げ、私が高校2年生の時に、事故で亡くなった。



私がお父さんの涙を見たのはお母さんのお葬式の時が最初で最後。



日帝大生のお姉ちゃんは、勉強に家事に、忙しく動き回り、私も、そんなお姉ちゃんが誇りだった。



光樹と会ったのは、お母さんの葬式の時。



弔問に訪れた組長さんの後ろに、ふてくされた様子でついてきていた。



私を見た瞬間、時が止まったように固まった後、ニタリと笑いかけてきた。



背筋を流れる、冷たい汗。



お父さんも気付いたのか、自分の後ろに私を隠してくれた。



それからというもの、光樹は毎日、高校の前で待ち伏せしてきた。



「あの!迷惑なんですけど!」



勇気を振り絞って言ってみても、彼は笑うだけで。

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