第34話

「父が死んだとき、姉が攫われたという情報が入ったらしいです。

それで組長さんの制止を振り切って・・・

駆けつけた時には手遅れだったそうです。

姉の消息も分からないままで・・・」



「・・・そうですか。」




なんだかニオうな。調べる必要があるようだ。


まぁ、ゆいかさんの口から奏さんの耳に入るだろうけどな。



「私の身体を開いても、気持ちが伴わない事に腹を立てて、光樹は毎回暴力を奮ってきます。そして必ず彼女、明里さんを私の目の前で・・・」



「・・・ちっ。」



思わず舌打ちが出る。思ったよりあの男はクソ野郎みたいだ。




「・・・もういい。」




ゆいかさんの低い声に、香坂が怯えた目をする。



そんな彼女を諫めるように、ゆいかさんは前を向いて微笑んだ。




「どうやら、その人に同情の余地は無い様で、安心しました。」




そう微笑むゆいかさんの目は、本当に嬉しそうで。



無邪気に笑う彼女に、俺も香坂も、背筋が凍る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る