第31話

「とにかく、貸す顔はありませんし、あなたが【陰】の人間だろうが、私には関係ありません。

あなたの言ったとおり、私は白虎の姫ではない。

ただ、彼らは私の友人なので一緒にいます。それだけなので。」



そう言ってノートに再び目を移した彼女は、もう彼らの存在を気にするそぶりもない。



実際に間近で見るのは初めてだ。



彼女は、認めている人間以外には、まるで別人の様になると、蓮さんが言っていたけど。



「危うく、俺もその内の一人になりかけたけどな。」



と、寂しそうに瞳を揺らす蓮さんを見て、胸が締め付けられたのを思い出した。



気を引き締めてチャラい集団に向き直る。



「お前等、【陰】の人間か?」



俺の鋭い視線に、先頭の女が怯むも、虚勢を張り、口を開く。



「そ、そうよ!ウチは【陰】の幹部の明里(あかり)

光樹の命令でこの女には誰も近付かせちゃいけないの。

白虎とは友好関係にあるでしょ?

この女・・・香坂咲に近付かない様に、彼女に言って貰えないかしら?」



そう言った明里の香坂を見る目は、嫉妬に狂っている。



なぜそんな命令を柊光樹がこいつらにしているのかは知らないが、訂正するべき事由があるので、再び口を開いた。



「友好関係だったのは前の話だろ。

今はお前のとこの総長さんが一方的に、敵対してるじゃねえか。

それに、この人は確かに姫ではないが、白虎全員が総意で守っている大切な人だ。

お前のように薄汚い奴が話しかけるのも虫酸が走る。」




そう吐き捨てた俺を女はキツく睨むも、俺は鼻を鳴らしてバカにしたように再び口を開く。



「それに、この2人は同じ学科の生徒として講義が隣同士になってるだけだ。実際にしゃべりもしてねえのに変な勘違いすんな。

隣に女が座るのすら下っ端使って排除しようとするなんて、お前等の頭はよっぽど心の狭めえ奴らしいな。」

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