第28話

木の良い香りに、落ち着くインテリア。



「なんだか、勉強しているうちに寝ちゃいそう。」



「ククッ、確かにな。」




とにかく私に用意したらしき、家でいつも奏と座っているのと同じソファーに腰を下ろす。



蓮も、私の座っているソファーの他に2脚ある、黒の長ソファーの一つに腰を下ろした。



「ここは、パスタ・ケーキ・軽食、なんでも揃ってる。」



「へー、じゃあ弘人来たらお昼ご飯頼もう。」



私はさっきの小窓のテーブルから、メニューを持ってきて眺めた。



午前中の受講を終えて、今はお昼時。



奏は今頃私のお弁当を食べてるだろうか。



なんて考えながらメニューを見ると、確かに、一通り揃っている。



ただ、紅茶と、チーズケーキはメニューにない。



ここに来るお客さんには申し訳ないなと思いつつも、安堵のため息を漏らした。





「・・・この場にいなくても奏の目を感じる。適わないね?」




「・・・弘人。」「・・・。」





振り返れば、コーヒーが湯気を立てているカップを3つ、トレーに乗せた弘人が、面白そうに蓮を見ながら立っていた。



「メニューに紅茶が無いのも、チーズケーキが無いのも、奏が手を回したから。

下手したらこの部屋監視カメラと盗聴器付きだったりして。」



「奏ならやりそうね。私は気にしないけど。」



さらっとそう言った私に、2人の視線が突き刺さる。



「・・・なに。」




「・・・お前なぁ。」


「ま、これがこの2人なんだよね。」



呆れた様子の2人に首を傾げる。



結局その日の昼はパスタを頼んで午後の受講も咲さんの隣で受けた。



そんな日々が日常化したある日、遂に事件が起こる。

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