カフェ nera farfalla(ネーラ ファルファッラ)

第26話

「・・・なんでいるわけ?」



「ゆいかちゃん、酷くない?俺、ココの店長だよー?」



「他に適任者はいると思う。」




そう呟く私の横で、蓮が深く頷いた。



「またまたぁー、俺と会えて嬉しいっしょ?あ、ミキちゃんはキャラメルフラペチーノね?電話番号と交換ー。」



目の前のチャラ男を置いて蓮に案内されるまま、店内からは存在が伺えない通路に入った。


廊下を進んですぐ、【関係者以外立ち入り禁止】と書かれた黒い扉が見えその扉に、蓮がカードキーを通した。




ピピッ・・・カチャ・・・




認証の音が聞こえ、施錠が外れる。



「ココ、兄貴が用意したんだ。」



「・・・また。私の為にココまでしてくれなくてもいいのに。」



お金が勿体ないと付け足す私に、蓮が苦笑いを返す。



部屋にはいると、真新しい木の良い香りがした。



家具はいつもの通り黒を中心に。



でもカフェということを意識しているのか、デザインはどこか可愛らしかった。



向かいにある扉が目に止まる。



「・・・あの扉は?」



私の視線の先に気付いた蓮が、「ああ・・・」とこぼす。



「あの扉は外に繋がってる。ここに直接来れるようにと、目の前が図書館棟の裏口の前だから、レポートとかもやりやすいだろ?」



必然と他人の目が集まりやすい私が動きやすいように、奏が配慮してくれたようだった。



「・・・で?あの、小窓は?あとその横の壁のボタン。」



近付いてみると、壁にちょっとした小窓があり、小さな半円形のテーブルの上には、お店のメニューが置いてあった。



その小窓の横の壁には『STAFF(スタッフ)』と書かれた、ボタン。



「・・・押してみろよ。」



おもしろそうに言う蓮に、いやな予感がしながらも、ボタンを押す。

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