第24話

「・・・奏は弘人を友達だなーって思ったのはどんな時?」



湯船の中、奏の腕に包まれてそう問いかける私に、眉間に盛大に皺を寄せた奏。



「思ったことねえし。」



そう吐き捨てる奏を困ったように見つめた。




「・・・まああれだ。」




私の様子に観念したらしき奏は、ため息を漏らすと、語り出す。




「親父が言ってたが・・・」



「パパが?」



「ああ。何か実行しようとする時、そいつが頭に浮かべば、どんなクソ野郎だろうが自分は存在を認めちまってるんだと。」



「うん?」



よく分かってない私に苦笑いをこぼすと、奏は「例えばな?」と続ける。



「隼人の場合は、ダチとはちょっと違うか。まぁ、弟みてえなもんだが、白虎の総長に指名されて、自分の補佐をする副を決める時、真っ先に浮かんだのがあいつだ。」



「それは分かる。弘人は?」



「あー・・・」



言い淀む奏に眉を潜める。



自分がうつ伏せで乗っている、奏の胸を、急かすように軽く叩いた。



奏は気まずそうに口を開く。



「まぁ、女から無理矢理渡された食いもんを、だな・・・」



「へぇ・・・゛無理矢理゛ね。」



「あ、ああ。゛無理矢理゛渡された食いもんを誰かにやろうと思って浮かんだのが・・・」



「弘人?」



「いや、厳密に言うと目の前にいたからだな。」



「・・・それじゃぁ弘人ちょっと可哀想じゃない?」




「・・・・いいんじゃね?」



「・・・まぁいっか。弘人だしね。」



「ああ。」



なんだかんだ言って弘人は今奏に大切に思われているのは事実だ。




(私が真琴以外を。咲さんを思い浮かべる日はあるのかな。)



そう思いながら奏の胸に頬を寄せた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る