第15話
【nera farfalla】
「ネーラ ファルファッラ?」
「イタリア語で、黒い蝶だと。」
私が何とか文字を読み上げると、蓮が教えてくれた。
「・・・奏ってイタリア語も出来るのね。」
「・・・そこ?お前なぁ」
蓮がため息をつくのに首を傾げる。
「・・・授業はなにも無かったか?」
気を取り直したらしい蓮は、鋭い目で聞いてきた。
「それが・・・「何もなかったよ?」」
氷上くんが何か言おうとするのを慌てて遮る。
「でもさ・・・」
「ん?」
言い淀む私に蓮が優しく問いかける。
「入学早々避けられてる女の子がいたんだよね。」
「・・・香坂咲(こうさかさく)か?」
蓮の低い声に驚いて目を向ければ、鋭い目が此方を見ていた。
「あの女に近付くなとは言わねえ。『本人』にはなんの罪も無いしな。多分、兄貴から聞くとは思うが、あの女の男が問題だ。
兄貴に比べればビックリするくらい小者だが、なんせ卑怯な手を使う。あの女を知らねえから、なんとも言えねえが、お前を攫うのに女を使うかも知れねえ。だから、十分気を付けろ。」
「・・・うん。」
蓮の真剣な言いように、私は彼女の逃げていく後ろ姿を思い出していた。
彼女を縛る闇は思ったより深いのかも知れない。
彼女が私の正体を知ったとき、どうするのか。
それでも私は、彼女を知りたいと、強く思った。
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