第12話

2限目が終わって、教材を片しながら氷上くんに、



「カフェテリアってどこ?」




そう聞くと、氷上くんの顔が苦笑いに変わった。




「今年オープンだから俺も位置は何となくだな。」



「それってさ、奏に関係は・・・」




「・・・ある、ね。」



「・・・やっぱり。」




氷上くんの表情で、何となく感じたけど。



大学は高校と違って多くの人が図書館を利用する。



だから、私物化のようにしてはいけないから、改装はしないでとお願いした。



不服そうだった奏だけど、何とか納得してくれたみたいなんだけど、後日、隼人から、大量の本を寄付して、他にもなにか企んでいるらしい。とは聞いていた。



まさかカフェテリアを作っちゃうなんて・・・



「これからの昼食とか休憩場所とか、待ち合わせは全てそこになりそうだね。」



「・・・ああ。明日オープンらしいから、今日は開いてないけどな。」



「ふーーん。あ、さようなら!」



私の隣を逃げるように通り過ぎようとした女の子に、挨拶をすると、女の子は怯えた声で、



「さ、さよなら・・・」



消えるような声でそう呟いて走って講堂を出て行ってしまった。



「あ・・・自己紹介、してないよね。」



今更な私に氷上くんが苦笑いを返す。



「何故か、ほっとけないんだよね・・・」



走り去る女の子の背中を見て、私はそう呟いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る