第11話

「誰か来るんですか?」



「い、いえ、ただ・・・」



言い淀んで目を泳がせる女の子を訝しげに見ていると。氷上くんが耳打ちしてきた。




「この女の男が、今新城と関わりがあるみたいだ。この女に関われば被害に遭うかもしれないと噂になってるから、大方こんな避け方になってるんだろう。」



「・・・へえ。だったら問題ないね。」



私は女の子の返事を待たずに隣に腰掛けた。


私の横に氷上くんも腰を下ろす。



女の子は私の行動にオロオロするばかり。



この女の子の彼氏が新城に敵対している組織に属しているみたいだけど、きっとこの子は・・・




ちらりと女の子の首筋の辺りに視線をやると、服の隙間から見える痣。



「・・・ちっ。」




私の突然の舌打ちに女の子は肩をビクつかせ、氷上くんは息を呑んだ。




「ごめん。奏のがうつったかな。」



苦笑いの私が言うと、氷上くんは困ったように笑った。




「ただ、弱い女の子は、男の力には勝てない。理不尽だよね。」



私が教室に入ってきた教授を見ながらそう呟くと、女の子はハッと私の顔を見て、氷上くんは何かに気付いたように難しい顔になった。



それから授業が始まり、2限目、教室を移動しても女の子の周りがポッカリ空いていた。



私は彼女の隣に腰掛ける。



私がまだ、奏の妻だとバレていないようで、どうやら白虎の新しい姫だと思われている。



はみ出し者同士仲良くしなくちゃね。



授業中でも晒される、侮蔑の視線を前に、クスリと笑いが出た。

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