第10話

すると、ふと目に入った腕時計。



去年の私の誕生日、奏にペアで貰ったもの。



その愛おしい腕時計が授業の時間を刻んでいる。




「ヤバい!!授業遅れる!」



急いで歩き出す私に併せてついてくる皆。




そして一緒に移動する周りの見物人。




「と、とにかく、皆!護衛これからよろしく!」




私はそう言って走って教室を目指した。



「授業終わったらカフェテリアにいろよ!」



そう言った蓮に前を見ながら手を振った。



「今日は俺がついてますから。」



一緒に走りながら氷上くんが微笑む。



「そう。じゃあ、敬語はなしね?」


「それは・・・」



言い淀む氷上くんにニヤリと笑う。



「じゃないと奏に話を通すからね。」



「・・・分かった。」



そうして入った講堂。


見渡せば埋まっている席。



すると、ある女の子の周りが円になるように不自然に空いているのが目に入った。



そこへ迷いもなく歩いて行き、女の子に話しかけた。



「ココ、2人座るけど、いいですか?」



「えっ!」



俯いていた女の子は、心底驚いた様子で顔を上げた。



遠巻きに座っている生徒達も信じられない様子でザワザワと此方を見ている。




なんだか嫌な感じに、私は眉を潜めた。

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