第6話

今の学力なら、易々と卒業できる。



子供ができなければそのほとんどを別の勉強に当てようと思っていたけど。






私は奏の子を産みたい。





・・・そして、自分の親のようにはならない。絶対に。




大学に行きながらでも、愛情を注げる。



「・・・私の考えをまだ言っていなかったものね。」




私は奏の残した華を、愛おしげになぞりながら口角を上げた。



こうなったら髪を下ろしていくしかないなと、ため息を吐いた所で、静かにバスルームの扉が開く。




鑑越しに入ってきた奏と目が合った。



私が見ている首筋に目をやると、バツが悪そうに顔を歪めた奏。




そんな奏に微笑むと、私は振り返って正面から奏の腰に手を回した。



震える吐息を吐き出す奏に、話しかける。




「子供をね?」



「っっ・・・ああ。」



奏の抱きしめる力が増す。



「産んでも通いたいの。」


「・・・ああ。」




「通いながらでも、愛情は注げる。」


「・・・そうだな。」




「・・・あなたにもね?」


「・・・。」




「不安、なんでしょ?」


「・・・・ああ。」




「どうして言わないの?」


「っっ。わりい。」




「奏?」


「ん?」




「・・・愛してる。」


「フッ、俺も。」





「いこっか。」



奏は柔らかく笑って私にキスを落とす。



こうやって不安を見せてくれる奏に、狂おしいほどの愛情を感じる。



私たちはそのまま家をあとにした。

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