第60話

「・・・・・・・・どうも、お邪魔します?」




「「「「「・・・・・・、」」」」」



「・・・てめぇら、俺の女に挨拶はどうした?」




頭を下げた私に、目を丸くする組員たちが声を発しないことに苛ついたらしき秋が低い声で睨みつける。





「「「「


   お、お疲れさまです!!!

       

              」」」」



「はぁ、お疲れさまです?」



ここはお疲れさまでいいんだろうかと疑問系で返せば、



「フハッ、やべぇ、ツボった!」



秋が腹を抱えて笑い出した。



「チッ、」



ムカついた私はとりあえず秋をつねる。



「イテッ、おまっ、ハハッ!」



痛がりながらも笑い続ける秋に呆れてため息をついて視線を滑らせれば・・・



まぁ、間抜け顔。



組員全員が口をパカンと開けてこちらを見ている。



「・・・どうなされました?」



やっと笑いが収まってお腹を押さえている秋の後ろから壮士がいつもの笑みを携えてやってきた。



「・・・なんでもない。」



私は、無かったことにした。



「おや、そうですか?では行きましょう。」



そう言って微笑んだ壮士のあとに続く。



勿論、秋は放置して。



「ま、待てっ!」



焦ってついて来た秋は慌てて私の手に指を絡めた。



「置いていくなよっ!」



「涙目だけどそれは私を笑った涙でしょう?」



私の微笑みに、秋の涙目が泳ぐ。



「う、それは、だな?うん。

・・・行くぞ。親父たちが待ってる。」




無かったことにしやがった秋は強引に私の手を引いて入り口の組員が開けてくれた玄関をくぐった。

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