第52話

「・・・という訳ですので、これからは弓様の家はココ、ということになります。」



「・・・学校は?」



「もう冬ですからね。それに家庭事情・学校側の体裁、諸々をつつかせていただきましたらテストさえ受ければ、卒業を認めて゛くださる゛そうです。」



微笑む壮士さんの笑顔が黒い。



「・・・へぇ?渦中の生徒にワザワザ学校にテストを受けに行けと?

新城秋の側近のくせにその程度の交渉術しか持ってないのかしら?」



広子の攻撃にも、壮士はその余裕の態度を崩さない。



「別室で受ける手はずですので。しかも・・・」



壮士は冷ややかな視線を私に、いや、後ろの秋に向けた。



「秋様が付き添うそうです。」



「・・・へぇ?」



広子は面白くなさそうに秋を見る。


そんな広子に口角を上げた秋は、



「惚れた女をクソみたいな場所へ行かせるんだ。俺も行かないでどうすんだ。」



当たり前だという秋は、私を包むその腕に力を込める。



「・・・ありがと、秋。」



私は薄く微笑んで、秋を見上げた。



「・・・、」


「っっ、」


「・・・ほぉ?」



秋、広子は頬を染めて黙り込み、壮士は目を見開いて関心の声をあげた。



「・・・なに。」



私の不機嫌な声に、それぞれが我に返る。



「・・・なんでもねぇ。」


「・・・はぁ、」



ため息混じりの2人を面白そうに見た壮士は、口元に手を添えて口を開く。



「・・・萌、でございますねぇ?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る