゛保護者゛との対面

第50話

「弓、これからお前の親友が来る。」



秋が私にそう言ったのは、彼と生活を始めて直ぐのこと。



生活用品は明日買い物に行く予定。



私の財布は、マン喫から一緒に来ていたので、そのお金で買うつもり。



すんごい渋々な秋。



「・・・つうか、俺のもんで十分生活できるだろが。」



不機嫌な秋の通訳、壮士がその言葉の意味を説明してくれる。



ちなみに、壮士も呼び捨てで呼べと黒い笑みを向けられたから大人しく従うことにした。



「それはですね、自分の匂いに包まれて生活する弓様が、萌、ということです。」



「・・・なんとなく分かりました?」



自分の持ち物に包まれる私、という状況が大変気に入っているらしい。



苦笑いをこぼして秋を見る。



「萌なところ悪いんだけど、生活用品ないのは困るな?」



そう言った私に渋々頷いた秋は、自分が選ぶという条件の元、買い物を許可してくれた。



そして今日、ここまで来てくれた、私の親友に嬉しさがこみ上げた。



ソワソワすることまもなく、インターフォンが鳴る。



そして、部屋に入ってきたのは、




「・・・弓!!」




黒髪を靡かせて、目に涙を浮かべた広子。



「広子!!」



私が走り寄ると、




バチーーーーン!!




頬をいきなり打たれて、唖然とする。



そしてすぐに包まれたシトラスの香り。




「・・・てめぇ、殺すぞ?」




極寒の低音でそう吐き捨てた秋は、私の頬を後ろからのぞき込む。



「・・・ひろ、こ?」



呆然とする私に、広子は叫んだ。



「親友のはずの私にまず頼らないでどうすんのっ、バカ女!!」



そう言って、秋から私を引っ剥がして抱きしめた。



「っっ、ごめんっ、」


「ん、無事ならいいっ、許す。」



私たちは暫くお互いを確認するようにキツく抱きしめあった。

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